今回は、アドアフィリエイトのマネジメントの手法を解説するインタビューです。
アドアフィリエイトとは簡単に言えば、外部の運用者に成果型で獲得を依頼することです。
いわゆるDtoCや高単価リード系のマーケティングにいる方なら馴染みがありますが、それ以外の業界ですと、あまり取り組むことが少ないはずです。
また、アフィリエイトは、アフィリエイター側の情報は出回ることは多いですが、事業者側がいかにうまくアフィリエイトを実施するかという情報をみかけません。
今回は、アフィリエイターとして活躍し、事業会社でも月間1億円規模のアフィリエイトマネジメントの立ち上げからマネジメントを森光輝さんにインタビューしました。
今回は
- 「アフィリエイト施策の是非」
- 「広告運用を内製化するか、アフィリエイト施策で外注するか」
- 「アフィリエイト施策をはじめる際の初動の動き」
- 「アフィリエイトマネジメントの流れとその手法」
などについてお話を伺いました。
案件売上月2億円!アフィリエイトのプレイヤーからアフィリエイトマネジメントへのシフト
野口
森さん、本日はよろしくお願いいたします。
まずは簡単に自己紹介をお願いいたします。
森
森光輝です。現在はEC事業をメインで行っており、自社のDtoCブランドの展開と、卸事業を実施しております。並行して、マーケティング支援も行っています。
これまでのキャリアとしては、大学在学中に、光通信系の訪問販売を経験した後に、Webマーケティングの領域に飛び込みました。
まず、DtoCの会社でインターン先をはじめまして、1年半ぐらいアフィリエイト・クリエイティブ制作などを行っていました。
新卒入社のタイミングでそのまま入社しようとしたのですが、会社で内部で諸事情があり、会社自体がなくなってしまったので、そのまま新卒フリーランスの形で、アフィエイターとして独立しました。
野口
ありがとうございます。新卒でアフィリエイターとして独立したんですね。
当時(2017~2020年ごろ)は、アフィリエイトがかなり流行っていた印象ですが、当時のアフィエイト業界はどのようなものでしたか?
森
そうですね。いわゆるアドネットワークが全盛期だったころで、今よりも薬機法をはじめとする法整備などが整っていないような状況だったのもあり、激しい訴求のクリエイティブなども含めたアフィリエイトがかなり流行っていましたね。
業種としては、ECがメインで、スキンケア、ダイエット、除毛などのコンプレックス商材が案件としては多かったですね。
野口
当時たしかにそういった広告が流行ってましたよね。
森さんのアフィリエイターとしての実績はどのようなものでしたか?
森
おおよそクライアントの商材の売上が月2億円程度でした。
配信していた広告費でいうと、5,000~6,000万円ですね。
私自身の粗利で言うと、月1,200万円ぐらいですね。
野口
すごいですね。新卒フリーランスでそんなにうまくいっている人はレアですよね。
森
一方で、アフィリエイト業界の規制が厳しくなりはじめるとともに、市場が縮小しはじめました。
かつ、トレンドが今でもそうですが、動画広告にシフトしはじめました。
ですので、このまま続けるにしても、組織化しないと成り立たないような状況になったので、アフィリエイターとしての事業活動は撤退して、事業会社側でのキャリアを積むことに決めました。
野口
個人のアフィリエイターから本インタビューのテーマであるアフィリエイトマネジメント側のポジションに移ったわけですね。
森
はい。とある事業会社のマーケティング責任者としてのポジションとして入社しました。
そこで、これから広告費を大きく踏んで、アフィリエイトを活用していきたいフェーズでしたので、アフィリエイトマネジメントの仕組みをイチから整えていくような役割でした。
最終的にイチからそのオペレーションを整えて、だいたい月1億円規模のアフィリエイト広告の予算規模を管轄していました。
だいたい20社ぐらいのASPとお付き合いして、ASPが抱えている累計のアフィリエイターの数とかは300名ぐらいいたと思います。
広告運用/クリエイティブを内製するか or アフィリエイトで外注するか
野口
まずざっくりアフィリエイト施策についての是非についてのご意見を聞かせてください。
森
そもそもの話で言うと、アフィリエイト施策にたどり着く時点でマーケ力が高い組織だと思います。
もちろんうまくいくかどうかは案件に依りますが、マーケティングをCPA観点でまず見れていないと、その発想にすら至りません。基本的なことですが、それができているだけで、集客意識は高いかなと思います。
野口
これは見過ごされがちな視点ですが、本当に共感できますね。
アフィリエイトに取り組んでいる企業のマーケティングがザルであることってあまりないですよね。
ちなみに、「自社で予算運用するか」・「アフィリエイターに外注するか」という分岐があるかと思います。
まずは自社でやってみて、という会社さんが多いように思えますが、ご意見を聞かせてください。
森
たしかに、まず自社でやりたいという企業は多いです。
ただ、まず大前提忘れていけないのは、広告運用の内製化、つまりクリエイティブ作成して広告を回すリソースって内製化するのは難しいということです。
個人的にはむしろ、アフィリエイトで伸ばすほうがおすすめです。
私は初動からアフィリエイトを使いたいです。
内製化するにしても、アフィリエイトのナレッジをもとに内製化しますかね。
野口
これは、かなりいいご意見ですね。
たしかにリスティングとかならまだしも、Meta、TikTokなど画像・動画を作る場合内製でやるのはかなりのリソースが必要ですよね。
しかも、イケてないクリエイティブを作った場合には、CPAが悪化する可能性が高くなるので、そのCPAを基準値にしてアフィリエイトを取りくんでも、事業インパクト全体を見るとマイナスですもんね。
POINT:広告運用の内製化は実はとても難しい!アフィリエイト施策から取り掛かるのも有効な一手である!
アフィリエイト施策をはじめる際の初動の動き
野口
それを踏まえて、アフィリエイト施策のはじめかたについて伺いたいです。
アフィリエイトをはじめるとなったら、一般的にイメージするのがA8に案件登録して、とりあえずアフィリエイターを募ってみる、みたいなイメージがあります。
アフィリエイトに取り組むとなったら、初動はどんな感じで進めるべきでしょうか?
また、準備すべきことがあればおしえてください。
森
おすすめとしては、A8などのプラットフォームに乗せるよりも、自社の案件概要を整理して、その領域が得意な領域が得意なASPにあたってみるのがいいかとおもいます。
案件概要を準備して、ASPの担当者にレビューしてもらうのが堅実かと思います。
事業者側が取り組む準備としては、レギュレーションですね。
単価 / 承認条件 / 上限獲得数 は最低限決めておくべきでしょう。
POINT:ASPとのつながりはあればあるほどいい!いつでも相談できる関係を築くべし!
野口
ちなみに、クリエイティブとかはどうですか?
画像/動画を自社で用意してなきゃいけないとかはありますか?
森
クリエイティブの準備はあまり必要ありません。
むしろ、アフィリエイターはクリエイティブを作るプロですから、特にこちら側で準備は不要であることが多いです。
あればよい素材ですと、たとえばGunosyとかSmartNewsとかですと、テキスト媒体なので、記事LPとかがあったら、喜ばれるかもしれないですね。
野口
媒体は何からはじめるのがいいですかね?
森
案件にもよりますが、まずは、Meta、TikTokがいいかなと思います。
野口
どんなASPにあたるべきでしょうか?良いASPのおすすめの探し方などはありますか?
森
私はもうある程度つながりがあるので、既存のつながりのASPの知人に「良い人いませんか?」とききますが、これから始める場合は、ホームページなどからとりあえず色んなASPに連絡しちゃうのがいいでしょう。
あとは、Xにはアフィリエイター界隈が多く、そういった人たちをフォローして相談するのはいいかもしれないですね。
月間1億円のアフィリエイト予算のアフィリエイトマネジメント手法とは
野口
アフィリエイトマネジメントというのは、実態としてはあまりイメージがつかみづらい人も多いかと思いますが、どのようなことをしてらっしゃいますか?
森
基本的に、案件設計、代理店開拓、クリエイティブの確認などの品質のコントロール、成果・承認報告のオペレーション設計などですかね。
野口
事業者側から見たときに、どのステップが一番重要ですか?
森
ズバリ、案件設計です。
正直、案件設計は経験者ではないとなかなか難しいところになります。
アフィリエイト施策のセンターピンは、「いかに強いアフィリエイターに取り組んでもらえるか」です。
アフィリエイターも数ある案件の中から取り組みたい案件を選ぶわけです。
アフィリエイターは常にさまざまな案件から「どれにしようかな」と選んでいる状態で、その中で目立たないと話になりません。
ですから、第1ステップとして、案件として魅力的であることは必須要件です。
単価が高いことや、商材が差別化されていそうかなどがその条件にあてはまります。
ほかにも重要な点としては「予算枠をどれぐらいのASP・アフィリエイターに卸しているか」も見られます。
予算も限られている中で、たとえば、10社に100件卸しているよりも、1社に1,000件卸してくれた方が、ASP・アフィリエイター側からみたときに、競争率が低くCPAも高騰しづらいため、コミット度は高くなりますよね。
ですから、どんなアフィリエイターに卸すかみたいなところは大事ですね。
とある媒体を強い代理店1社だけに依頼させてもらったときも、月間で5,000件ぐらいまで伸びました。
野口
なるほど。たまにASP側から「この案件を独占契約で取り組みたいです」といった要望をされるときありますもんね。
ASP側の都合であるとしても、たしかにその方がコミット度があがりますよね。
WIN-WINの関係を築くことはたしかに重要です。
POINT:アフィリエイトは、1にも2にも案件設計!案件設計だけは経験者やASPにレビューしてもらうのが吉!
アフィリエイト施策の落とし穴!事業が停止になりうるリスクコントロール
野口
アフィリエイト施策を始める会社に注意してほしいトラブルなどはありますか?
森
一番怖いのは、気づかないうちに100件ぐらいの成果承認がされていて進捗を追えておらず、広告費がとけるみたいな事故が起こります。
とりあえず獲得だけしてくるみたいなアフィリエイターもいて、非常に質の悪いリードしか獲得できないみたいなことも起こります。
野口
それが起こったら最悪ですね。赤字になって事業停止リスクがあるレベルの損失ですね。
一方で、アフィリエイターも広告費を自分で負担して、獲得成果に応じて報酬が発生するわけですから、構造としては容易に起こりうる問題ですね。
森
もちろん、働き方のスタンスは人それぞれではあります。
当然、自分の成果報酬を最大化するという姿勢で取り組むアフィリエイターは実際に多いです。
一方で、事業全体のインパクトまで寄り添って、取り組める方もいます。報酬の最大化よりも、引き上げ率を高めるような動き、つまりクライアントに寄り添うアフィリエイターもいます。
実際私もアフィリエイター時代は後者だったのですが、しっかり事業インパクトに寄り添った動きをして信頼していただければ、案件の継続率もあがりますし、単価もあがります。
ASP(クライアントとアフィリエイターの間に立つ広告代理店)の方も、そのような動きをしているアフィリエイターは貴重なので、情報もいただけますし、案件を紹介してもらいやすくなります。
だからこそ、発注者側になっても、アフィリエイターの気持ちがわかったうえでコミュニケーションを気を付けていました。
即レスをするなどの基本的なことはそうですし、LP発行やリンクの発行などのインフラもスムーズに連携して、そのほかデモグラなどを整理したり、引き上げ率が高いクリエイティブの要素などは共有したりしています。
あとは、本当に人付き合いなので、飲みに行くとかも一手ですね。
アフィリエイターも人ですから、「この人と一緒に働きたい」「この会社の目指すビジョンに共感している」というのは絶対あるんですよね。
ですから、そういった人としてのコミュニケーションは発注者・受注者の関係をこえてやるべきかと思います。
POINT:アフィリエイトの事業設計リスクは絶対に避けるためにリスクを洗い出し条件にすべて反映すべし!社内の効果測定オペレーションも緻密に組んで日次でCPAを追うべし!
まとめ 【インタビューを終えて】
今回も学びの多いインタビューでした。
アドアフィリエイトをゼロから立ち上げて、月間1億円規模まで管轄した責任者というのはかなりレアな人材です。そんな方から経験談を聞けたのはかなり有益なインタビューでした。
さらに、アフィリエイターとしても強い実績がある方であり、かつマネジメント側も経験している方というかなり希少価値が高いかと思います。
アフィリエイターならではの力学を知っているからこそのアフィリエイターのマネジメントの要諦も深く知れました。
本インタビューをまとめます。
- 広告運用の内製化は思ったよりリソースがかかる。初動からアフィリエイターに依頼するのも有効。
- アフィリエイト施策は、案件設計がすべて。単価、商材の差別化などが魅力的かのアフィリエイトマネジメント経験者 or ASPのレビューは必須!
- ASPとは複数つながっておくべき。ホームページから問い合わせ or Xでのアフィリエイター開拓はどんどん行い、いつでも相談できる関係性を作る
- アフィリエイト施策は、社内でモニタリングするためのオペレーションを組まないと事業停止するれべるリスクがあるため、効果測定オペレーションを組んで最低でも日次で進捗を追うべき。
- アフィリエイターも人なので、密なコミュニケーション連携、オフラインのコミュニケーションなど怠らず関係性構築をすべし!
結論としては、広告施策で集客したい企業は業種問わず、アフィリエイト施策経験者やASPへのレビューをもとに案件設計し、アフィリエイト施策に取り組んでみるのがおすすめです。
以上。