ビジネスモデル・プラットフォームとの向き合い方

ビジネスモデル・プラットフォームとの向き合い方

なぜ、最悪の業績なのに年商の20%にもあたる1億円の売上を手放してまで楽天市場から退店するのか

面白い記事を読みました。

兵庫県加古川市の「防寒衣料に特化したメーカ」を標榜するワシオ株式会社の代表・鷲尾さんの記事。

まず、タイトルがいいですよね。

インターネットブログ記事オタクの私としては、「はい、おもしろい」ってすぐわかっちゃいます。

一般的に、楽天市場への出展はEC事業者としてECで売り上げを拡大するという観点でいえば上位に挙がってくる施策です。

しかもその楽天で売上1億円までいくのはかなり強い販売チャネルであるのにもかかわらず、なぜ撤退するのかというnote。

記事の詳細は、読んでもらうとして、この記事で特にいいなと思ったのは以下2点です。

① ビジネスモデルとの向き合い方

② プラットフォーマーとの向き合い方

それぞれ書きます。

① ビジネスモデルとの向き合い方

> 製品が思うように売れない理由は、「暖冬のせい」や「コロナのせい」と、言ってしまえばそれはその通りです。

>でもそれは「運ゲー」に身をゆだねるような、思考停止の言葉でもあります。

>「暖冬でも利益が出るビジネスモデルとは?」

>「コロナ禍でも耐えられる会社とは?」

>という問いに、目を背けてきているなぁとずっと思っていました。

うーん、本当に大事なことですよね。

ビジネスモデルを考えつくすことって忘れがちなんですけど、その先を見ておかないと施策がいつかつきますし、施策尽きた後に後戻りできない状況までいっちゃいます。

例えば、施策がつきるとよくありがちなのが、競合がやっている施策を真似よう!みたいな施策になっちゃうと、どんどん自社のポジショニングも差別化ポイントがなくなります。

② プラットフォーマーとの向き合い方

> ・楽天市場で推奨されるロングテール戦略には確認すべき前提がある

> でも、ワシオは原則セールをしないスタンスだったので、季節性があるニッチな商品がどんどん余っていくという状況に陥りました。

> 楽天市場においてはとにかく「なるべく検索に引っ掛かること」と「検索された時に上位に表示されること」の価値が高いとされていると思うので、「売る」ためには必要な事として当たり前に推奨されています。

>したがって、たまにECコンサルを名乗る会社さんから「楽天市場の売上を伸ばしますよ!」という主旨の営業電話がかかってきますが、話を聞いてみると大体が「検索ワードの最適化」「最新の検索アルゴリズム情報の提供」などです。

コンサルサルタントなら、頭に入れるべき観点。

ビジネスモデル、企業の文化などクライアントが大切にしている価値観に寄り添いたいところ。

「売上上げたいんなら、まずこのテクニックを実行しましょう!」とベストプラクティスをまず当てはめに行きたくなる気持ちはよくわかります。

当然ながら、テクニック論が大事ではないということではありません。

実行が大切ですし、この記事でいうとプラットフォーム攻略という観点では本質論だけではうまくいかず、売り上げにつながるために効果的な施策をアドバイスすることは、コンサルタントに求められていることでしょう。

極端な話ですが、売上あげたい!というクライアントに対して、MBAでいかに本質的なマーケティング論を学んだ人にコンサルティングしてもらうよりも、今すぐ使えるテクニックを教えてくれるコンサルタントの方が重宝されるでしょう。実行が大事です。

まず目的に立ち返りましょう、といつまでも議論するよりも、試行錯誤を重ねたほうが、短期的・中長期的いずれも結果が出るケースが経験上多いです。

プラットフォーマーが求めていることに合わせる。これは戦略としては正しいです。

それは、SEOで例えるならば、Google がクロールしやすいようにtitleタグ、h1,h2などを設定しましょう、であったり、信頼性が求められるからこそ、著者情報を記載しましょうみたいな話ですね。

しかし、Googleが昔から繰り返し強調しているように、「Googleのプラットフォームにあわせるのではなく、ユーザーにとって価値のある情報を届けましょう」という視点が最も重要です。

それはプラットフォームから事業レベルに落とし込めば、もう一度本文を引用させてもらうと、下記です。

>当然のことながら、ワシオが求めていたような「商品の魅力を十分に引き出し、価値を伝えるためにどうすれば良いか」という提案をしてくれるコンサル会社に出会ったことはありません。

ここなんですよね。

この会社が大事にしている価値観って何なんだっけ?

「その戦術は戦略、戦術、プラットフォームから逆算すれば正しいけど、本当にその会社が実現したいこと、商品が届けたい価値に沿っているんだっけ?」って話につながります。

とても基本的な思考になりますが、こういうときに各論点ごとに丁寧に論理的思考を当てはめることが求められます。

「ECでは、ロングテール戦略が大事」 -> 「この事業の場合でも本当にそう?あてはまらないとすればなに?」という検証。

会社が大事にしてる価値観ってなんだっけ?と考えつくして、自分なりの仮説を持ってから、クライアントと対話したいです。

野口 和弘

野口 和弘

Stevens Company株式会社 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。
医療・福祉系のベンチャー企業に入社。新卒入社と同時にDX・デジタルマーケティングを管轄する新部署の立ち上げを任される。 デジタルマーケティングのゼロからの構築と社内オペレーション全体のDX/業務改善、監査対応などに従事。
その後、シンガポールの越境ECコンサルティング会社に日本人2人目のフルタイムメンバーとして転身。プロジェクトマネージャーとして国内アパレルメーカーの海外進出を支援後退社し、当社を設立。
当社設立後は、マーケティングコンサルティング、プロジェクトマネジメント、新規事業立ち上げ支援などをメインに活動。
得意業種は、IT・医療・教育・美容業界。