「信じたいもの」を信じる前に

「信じたいもの」を信じる前に

私の親友は薬剤師で、薬局に勤めています。

性格は雑な感じですが、当然ながら国家試験を合格しているわけで、現場経験もあり薬には詳しいのです。

私が体の不調があったときに彼に聞いたら、この薬がいいよと市販のものを教えてくれます。

専属の薬剤師のような存在でもあります。

そして、彼はいたって健康で生来の身体の強さがあります。

でも、彼に会うたびに、この前体調悪くて病院行って、こんな薬をもらったという話をしてくれます。何かちょっとでも体の不調があると、すぐに病院にいってます。

自分だけじゃないかと思う不調や、ちょっとした身体の不調も病院に行けば適切な薬があるケースが多いから、私ももっと気軽に病院に行かないとなと思います。

忙しいという理由や、寝たら、食べたら治る、という人が多いのではないでしょうか。

私もそうです。

10年以上首にいぼがあって、痛みはないしネットで調べたら「まぁ大丈夫だろう」だったのですが、ようやく知人の医師に直接指摘されて、病院に行きました。

結果、ネットで調べた通り身体になんの影響もないものでした。

投薬ではなく簡単な手術をしましたが、とれてから気にならないというだけで想像以上にストレスがなくなりました。これはリサーチしても手に入れられない安心感です。

インフルエンス力の怖さ

さて、SNSなどをみると、「病院よりも筋トレ、食事だ」という主張や、極端に言うと「病院なんて意味ない」ことをほのめかす言説をみます。

(※ 後者については眉唾物で論外ですが、なぜかそういった逆張りな主張はコアなファンがいるのも事実です。)

前者に関しても「薬で治せるなら直そう」「薬でしか直せないものがある」という考え方はもっと共通認識としてあってもいいよなと感じます。

とはいえ、医療情報は薬機法もありますし、専門家 (つまり医師)しかそういった情報は発信してはいけませんし、医師ですらかなり発信の仕方に気を付けられています。

一方で、SNSでは「あくまでも体験談」という建前ではあるものの、専門家以外の発信が多すぎて、発信したもの勝ちみたいな傾向は今後も加速度的に増えていくでしょう。

今でももちろん、明らかな誤情報や薬機法違反はインフルエンサーでも刺されていますが、流れとしてはこれは止まらないでしょう。

SNS時代のインフルエンス力の怖さです。

(医療情報に限らず)、顧客もSNSで見た情報をもとに市販で買えるものを手軽にECで買うという顧客行動が多いわけです。

インフルエンス力のトレンドは加速度的に増えていく

かつて、SNSが今よりも流行る前はどうだったか。

少し前の話をすると、SEOやアプリが全盛期時代で、そのときにいわゆる「WELQ事件」が起こりました。

当時の事件を題材にした朽木 誠一郎さんという記者が書いた「健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方」という2018年に出版された書籍を最近読み返しました。

当該事件に限らず、「ラクに健康に生きたい患者」「怪しい治療が患者を安心させる矛盾」などかなり興味深いテーマが記載されているため超おすすめです。

臨床・研究・製薬には多大なリソースがかけられていくつものステップをもとに開発されているわけで、エビデンスも常に正しいわけではないですが、少なくとも身体の不調を感じたら、病院にいって適切な処方をしてもらうのが最も解決への期待値が高いのはいうまでもないでしょう。

また、「WELQ事件」は、DeNAのみが名指しで糾弾されておりました。

(※ 同時に、DeNAはキュレーションメディアから軒並み撤退した記憶です。同じようなメディアもGoogleのアルゴリズムアップデートで消えました。)

これは、イチ企業に責任追及した事例ですが、SNSという「情報認知」「情報探索」のトレンドはプラットフォーム運営企業がつぶれない限りそれは止まりません。

医療以外にも、Metaが有名人の写真を使った「金融系詐欺商材」に対しての責任追及されていますが、まだあります。

情報発信のジレンマ

なによりも医師も専門家もまともな人は、公開情報として何かを発信する際は、SNSでインフルエンサーが発信するような「断言的口調」を割けます。

「症状」「状態」はその人によって異なるし、実際にみて判断しなければわからないことがあります。

1 on 1 のクローズドの状態でしか出来ないアドバイスがあります。

最近Youtubeにて、とある動画を見ていた時に、とある専門家が、「○○は実は効果がない」「一方で、○○というエビデンスがあり、効果がないとは言い切れない」という話をしていました。

思慮深く、かなり気を付けながら解説をされていました。

しかし、コメント欄を見ると、「この人ごちゃごちゃと何言っているかわかりづらい!もっと端的に結論を話せ!」というコメントが散見されて、個人的にはぞっとしました。

「人は信じたいものを信じる」というのを生で見た感じです。

ここまで読んだ人には、仮に科学的根拠があっても、結論だけ話すことには何の意味もないことはお判りいただけると思います。

もし、専門家の人が、そのコメントを読んで、「結論を話すほうがいいのか…」と方針を変えたらおしまいです。

「わかりやすい」ことが「正しいこと」よりも優先度が高くなっていて、繰り返すようにSNSのショート動画のトレンドにも沿った形でその傾向が強まっているのではないかと感じます。

とはいえ、そのトレンドに抗って情報を遮断するというのは現実的ではないと思うので、私たちは医療に限らず困ったらまず「クローズドな環境で、自分の状況も話したうえで専門家にきく」というアクションをとるべきだというお話です。

以上、まとまってないブログでした。

野口 和弘

野口 和弘

Stevens Company株式会社 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。
医療・福祉系のベンチャー企業に入社。新卒入社と同時にDX・デジタルマーケティングを管轄する新部署の立ち上げを任される。 デジタルマーケティングのゼロからの構築と社内オペレーション全体のDX/業務改善、監査対応などに従事。
その後、シンガポールの越境ECコンサルティング会社に日本人2人目のフルタイムメンバーとして転身。プロジェクトマネージャーとして国内アパレルメーカーの海外進出を支援後退社し、当社を設立。
当社設立後は、マーケティングコンサルティング、プロジェクトマネジメント、新規事業立ち上げ支援などをメインに活動。
得意業種は、IT・医療・教育・美容業界。