プログリット社のマーケティングからわかるtoCマーケティングのトレンド

プログリット社のマーケティングからわかるtoCマーケティングのトレンド

株式会社プログリットの直近の決算説明資料では、ブランディング強化として、電車広告や動画広告に力をいれていくことが記載されております。


(画像引用:株式会社プログリット 2025年8月期 第1四半期決算説明資料)

toCサービスのマーケティングは、近年Web広告を中心としたダイレクトマーケティングでCPAを出来る限り最小化し、新規顧客の獲得をするのがセオリーとなっていましたが、ある程度Webでの打ち手が頭打ちになってきたら、マスマーケティングにも予算を割く必要が出てきます。
(※ 資料内では、動画広告という記載のため、Web広告における動画広告を指す可能性があるため、一概にマスマーケティングとは言い切れません。)

この傾向は「市場の大きさ」という大きな変数もありますが、具体的に言えば「認知チャネル」から考えるとわかりやすく、Web広告を見てサービスを知って申し込む層というのがほぼほぼ獲得が終わって、それ以外の層にリーチするためにはWeb上でのリーチが難しくなってくるという論理になります。

ちなみに、個人的には特に初期においてtoCサービスの集客のコストパフォーマンスという点においては、依然Web広告などのダイレクトマーケティングが有意であることは変わりはないと考えています。

そもそもダイレクトマーケティングの良さは、小額から出稿出来てリアルタイムで数値を計測でき、アクセス単位の顧客行動もわかり、ターゲットも予算もすぐに調整できるところであり、直近で効果測定が可能なTV広告サービスも出てきましたが、マスマーケティングは予算の観点からも効果測定の観点からもまだまだ敷居が高い手法かと思います。

その意味で、初期段階からマスマーケに踏み切るのはかなりリスキーだと考えており、かなり昔の事例ですが、メルカリもVCなどから多大な資金を引っ張ってきてTV広告を打って当たるかどうか、みたいなある程度マネーゲームが必要な側面があります。 (※ 同社の当時CFOの小泉氏や、ライバル社であった当時のフリルの堀江氏も本件に言及しており、小泉氏は絶対にこれしかないと思いつつも、ほぼ賭けみたいな側面があったことを振りかえっていらっしゃいました。)

私自身マスマーケの経験はほぼほぼなく、どちらかというとCPAなどの各種数値を厳密に見ながら予算を有効に使うアプローチが手堅いと考えているため、TV広告だけではなく、新聞や業界紙への出稿、電車広告や街中カバンなどのオフライン広告などのマスマーケは特に初期はおすすめはしていません。(※ 商圏が限られている店舗型のビジネスでは潜在顧客自体も少なく、オンラインからの集客も難しいケースがあるため、その限りではありません。)

あえてわかりやすい言葉を使えば、「えいや!」で予算をがっつり使うという気概が必要であり、やってみなければわからず効果も見えづらい難しさがあります。

しかしながら、ダイレクトマーケティングが頭打ちになって、CPAが上がり続けている状況をなんとか制御するのも厳しいため、たとえばプログリット社のような上場して資金調達し、さらなる市場をというフェーズでは(それが効果が見えづらくとも)マスマーケティングに踏み入れるのは定石に思えます。

ちなみに資料でも、「指名検索を増やす」という文言が出てますが、検索行動に反映されたとして、それを売上とどれぐらいの相関性があったかは統計的に示すことできるとは思いますが、流入チャネルとして厳密に測定するのは当然現実的ではありません。(※ 元USJの森岡さんの書籍でもかなり厳密に予測されていたことが言及されてましたが、高度な統計手法が必要なのと、やるとしてもマーケティングへのとてつもない予算が前提となってくるかと思います。)

マスマーケティングの文脈で、たびたび「指名検索数」をKPIに挙げるケースが多いですが、上記の理由からかなり限定的なことであることは要注意です。

このダイレクトマーケティングとマスマーケティングの良いとこどりな手法としてはSNS(※ SNS広告ではなく自然投稿のSNS) かと思いますが、再現性であったり、会社代表個人の名前を伸ばすという話ではなく、会社・サービスとしてという話で言えば、非常に先が読みづらく、計画に落とし込みづらい難しさもあります。(※ 上場企業だと特に。)

今後、上場したばかりの会社があらたな市場を狙うために、マスマーケティングに踏み入れるというトレンドは確実に多くなってくるでしょうし、マスマーケティング支援会社(ex: 電通やベクトルなど)などでもベンチャー企業の案件が増えてくると思います。

以上

野口 和弘

野口 和弘

Stevens Company株式会社 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。
医療・福祉系のベンチャー企業に入社。新卒入社と同時にDX・デジタルマーケティングを管轄する新部署の立ち上げを任される。 デジタルマーケティングのゼロからの構築と社内オペレーション全体のDX/業務改善、監査対応などに従事。
その後、シンガポールの越境ECコンサルティング会社に日本人2人目のフルタイムメンバーとして転身。プロジェクトマネージャーとして国内アパレルメーカーの海外進出を支援後退社し、当社を設立。
当社設立後は、マーケティングコンサルティング、プロジェクトマネジメント、新規事業立ち上げ支援などをメインに活動。
得意業種は、IT・医療・教育・美容業界。