AI経営って何をさしているの?

AI経営って何をさしているの?

「AIに全賭け」「ユニコーンを量産」DeNA南場会長、社員半数の1500人で新規事業

> 南場会長はイベントで社員が10人規模ながらユニコーンに成長した米国企業の事例を紹介し、「DeNAはAIにオールイン(全賭け)する」と宣言。「(AIの活用で)半分の人員で現業を成長させていく」とし、半数の1500人を10人単位のチームに分け、新規事業を立ち上げる構想を明らかにした。

ソフトバンクG、AI主軸に転換 外部資金活用を強調
> 「人類の1万倍の知性を持つ人工超知能(ASI)を絶対に実現したい」。半導体やデータセンター、電力、ロボットを重点分野として挙げた。
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「AI経営」のような意味合いの言葉を大企業を中心にニュースでよく目にしますが、どういうことを指しているのかは会社によって異なります。

私の理解ではAIは、特定の技術の話ではなく、技術ドメインを指す広い概念だと思ってます。

ですから、各社何に取り組むことを示しているのかは当然異なるわけです。

上場企業であれば、AIを盛り込んだ成長戦略を盛り込むことで、成長性を期待させる狙いはあるでしょう。

決算説明会資料などを読むと、「AIの活用によりこの分野をこう改善しました!」「既存事業にAI技術を盛り込むことで新たな需要を開拓します!」みたいな主旨の文言を頻繁にみかけます。

極端に言えば、「ChatGPTを使い業務フローを自動化/効率化する」みたいな話でもAI経営、といえるため具体的に何に取り込むことを示唆しているのかを読み取ってから評価する必要があります。

言い換えれば、AI技術はChatGPTなどの汎用アプリケーション化しているわけで、業務レベルで使うことは一般化されてるので、それも「AI経営」と言われても間違っている!とは言い切れません。

「AI経営」の解釈のひとつとしてたとえば、冒頭に記載したDeNA社の場合は、「AIに全賭け」は「AI関連の新規事業をたくさん作ること」(意訳)を指しています。

しかしながら、今や10年前などと違って「AIスタートアップです!」というだけで、なんかすごそう!と思う時代ではないわけで、ベンチャーキャピタルなどもそれだけで「投資する!」みたいな流れはなくなるでしょう。「生成AI」が流行りだした少し前までは、「生成AIスタートアップ」というだけで資金が集まっていたように思えましたが、ブームは沈静化していそうに思えます。

そもそも、「AIで勝つ」という文脈では、米国・中国を筆頭として世界トップレベルの技術者を抱えているかどうか、その資金力があるかが大前提になり、このゲームの難易度は世界最高SSSランク難易度です。

現実的にそこに今日明日立ち上げたAIスタートアップの勝ち筋はかなり低いように思えます。少なくとも、ChatGPTみたいなものを作る!というのはほぼ無理じゃないでしょうか。少なくとも、基盤モデル開発で勝つ!は無理でしょう。

さらに、それらのトップティアの会社が次々と安価で、基盤モデル開発だけでなく、アプリケーションも両方やって、作り続けて、無料 or 安価で提供されるようになります。AIスタートアップの多くはアプリケーション開発だと思うので、それらの会社が一番恐れているのは、「先のToptierの会社群が自社ドメイン領域に同様のアプリケーションを出すこと」なはずです。

冒頭のソフトバンク社のニュース場合は投資会社的なムーブで、自社でAI新規事業という文脈ではなく、資金をあらゆるところから引っ張って、世界中のAI領域に投資するというポートフォリオ戦略の話と読み取りました。

「AI経営」が眉唾とは言わないですが、よくSNSでも馬鹿にされている話ですが、「うちもAI経営だ!AIでなんか新規事業やろうよ!よろしく!」みたいなのは言わずもがな危ない傾向ですね。

そもそも、こういったAI技術は日進月歩で進化しそのうえであらゆる分野に分かれるので、ニュースで見たり、私のようにAIアプリケーション触るレベルでは実態は全く本質的な理解は出来ないかとは思います。

つらつら書きましたが、AIについて簡単に語るな、という話に帰結したいわけではなく(それを言えるほどの知識がそもそも私にはないです)、繰り返しになりますが「AI経営」みたいなワードを見聞きしたときに具体的に何を取り組みする話なのかというのを出来る限り読み取るようにしよう、という話です。

そもそも広い論点なので、そういった話の中で自社/自分の業務に取り入れられるような話はかなり限定的なはずで、私の場合も正直やれることは汎用アプリケーションになってから、自分の業務で効率化/自動化できることはないか試すしてよければ取り入れるぐらいしか出来てません。(そして、それで十分だと思ってます。)

最後に思い出した話ですが、数年前に初対面のAIスタートアップの経営者に「野口さんは何をやってるんですか?」と言われて「Webマーケティング領域です」といったら、「Webマーケティングとか全部AI化できそうですよね。○○社(国内最大手広告代理店の社名)もAIでマーケティング自動化してますよ!」みたいなこと言われて、「なんだこいつ」と思ったことがあります。

できるものならAIに私の仕事を全部奪ってほしいです。
奪われたら奪われたで、喜んで別のことやります。

野口 和弘

野口 和弘

Stevens Company株式会社 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。
医療・福祉系のベンチャー企業に入社。新卒入社と同時にDX・デジタルマーケティングを管轄する新部署の立ち上げを任される。 デジタルマーケティングのゼロからの構築と社内オペレーション全体のDX/業務改善、監査対応などに従事。
その後、シンガポールの越境ECコンサルティング会社に日本人2人目のフルタイムメンバーとして転身。プロジェクトマネージャーとして国内アパレルメーカーの海外進出を支援後退社し、当社を設立。
当社設立後は、マーケティングコンサルティング、プロジェクトマネジメント、新規事業立ち上げ支援などをメインに活動。
得意業種は、IT・医療・教育・美容業界。