「身銭を切った経験によるノウハウこそ1番有益」は大前提
「机上の空論ではなく、経験こそが大切」というのはいうまでもありません。
身銭を切った経験によるノウハウこそが至言であるに違いないでしょう。
しかしながら、時間・お金・人的工数のリソースは限られているわけですから、すべてを体験することは理論上不可能です。
「やったことないことの勝ち筋を考えることすらムダ!」と言い切るのは、実践家としてストイックな姿勢で素晴らしいですが、いささか極端であるとの見方も捨てきれません。
実際、マーケティングコンサルタント立場でも、「この施策についてはどうですか?」という自分の精通していない領域に関して質問された場合でも、「やったことないので分かりません」という趣旨の回答をすることはたしかにありますが、できる限り1次回答の精度をあげるため日々情報収集や精通している人へのヒアリングを行っております。
失敗した経験には価値があるものの、文字通りリソースを損失するわけですから、事前の情報収集によって代替手段があれば、相対的にリスクを考慮できます。
ちなみに、ここで強調しておきたいのは、中途半端な回答をするぐらいなら、「やったことないのでわかりません」という回答をする姿勢は個人的には信頼できます。
以前、シェアオフィスで働いていていたときに、近くにいた別の会社のマーケターと思われる方がこんな会話をしてました。
クライアント:「SEOってどうやればいいですか?」
マーケター:「Googleはユーザーの体験を一番重要視しているからテクニック論ではなく、ユーザーにとって1番コンテンツを書きましょう」
クライアント:「まぁそうですよね」
そのクライアントも満足したのかしてないのか分からない会話です。
たしかにその回答はプラットフォーム上の観点からは本質的な情報で間違ってはないです。
しかし、このケースでは意思決定の判断および実務ToDoにつながらないどころか、方向性すらイメージできる回答ではないため、正直に「やったことないので分かりません」といったほうが誠実です。
かくいう私も、できる限り施策アドバイスの精度を上げるために、経験がない領域もできる限り情報収集していますが、中途半端なこと言ってもバリュー提供できないわけで、そして当然にそれらはすぐにばれます。
たびたび続けば、当たり前に「インチキコンサルタントの烙印」を押されてしまうでしょう。保身のために適当な発言をし、仕事を頂いても誰も得しません。
であれば、わからないものはわからないと伝えておくのが賢明です。
私も、わからないことは言わない、言うとしてもできる限り再現性が高いであろう実践者のヒアリングをもとにした話をすることを意識しています。
「やったことないけど知っておく」ため情報収集アプローチとその注意点
さて、マーケティング施策に限った話をすれば、やったことはないがその施策の全体像を知っている状態をつくっておくのがおすすめです。
特にマーケティング領域においては、CPA/ROAS/LTVなど明確な指標があるケースが多いため、「施策の有効性」というのは常にほかの施策との比較によって決まられるべきものであると考えます。
では、「どのように準備しておくべきか」、言い換えれば「どのように情報収集すべきか」というお話です。、
① 少額でいいからテストでやってみる
② やったことがある人に聞く
③ ネットや動画や書籍などで学ぶ
④ 似たような別の経験をもとに仮説を立てる
などが対策としては存在するでしょう。
「どれか」ではなく、複合的に情報収集をしてみてほしいです。
しかし、注意しておきたいのは、下記になりますので、それらを加味しましょう。
- 「少額でいいからテストでやってみる」は、必ずしもやってみたからと言って、それが正ではない可能性があることです。前提条件の変数が間違っていて経験値として有益どころか間違った認識によって「有害」になる可能性があること、継続的にある程度リソースをかけて実施してみてわかる効果が存在することがあげられます。
ex) 自社で採用イベントを開催してみたが、採用につながらなかったから施策として効果がなかったからもうやらない、などは早計であり、そもそも開催場所や形式が間違っている、1回で簡単に採用にはつながらない、などが要因として考えられるでしょう。
- 「やったことがある人に聞く」は再現性の点で疑わしい可能性があることです。これは、「ヒアリング者の論点設定がずれている」と「話し手が経験を正確に抽象化できてない」などの原因によって起こりえます。
ex) SEOをやるからといって、toB商材なのに、toC商材の経験しかない人に聞いたり、いわばリード系のビジネスなのに、アドセンス系のメディアの人に聞いたり、話し手が「ライターとして強い人」でコンテンツライティングの話しかできないでSEO施策全体を抽象化できてなかったりする事象を指します。
- ネットや動画や書籍などもものによりますが、端的に情報が古い、公共の情報になるので核となる「公共では間違っているかもしれないため話せないが、本当はこれ大事なんだよ」みたいな実行する上で大切なコア部分は出ないことが多いです。また、発信者側の営業トークにつなげるなどポジショントークが含まれている可能性があります。
- 「似たような別の経験をもとに仮説を立てる」これは言わずもがな前提も結果の検証も出来ないので合っているかわからないです。とはいえ、インチキコンサルタントの話を聞くよりも、PDCAサイクルを適切に回せるという実務上の利点は大いにあります。
ポジショントークを踏まえたうえで、「② やったことがある人に聞く」については、私自身も有益な情報リソースとなりえるよう発信してます。
弊社コンサルティング事業のMissionは「見えないものを形にし、正しいことを実行する」であり、それを体現できればと考えています。
その取り組みの一つとして、マーケティングの専門家である私が、それぞれの施策の専門家に施策の有効性を質問をするインタビューを実施し、それを記事化しています。「専門家」が「専門家」に聞くことで下記の注意点を解消しています。
「ヒアリング者の論点設定がずれている」と「話し手が経験を正確に抽象化できてない」などの原因によって起こりえます。
※ ちなみに、論点設定さえ正確にできれば、聞き手が「専門家」である必要はないですが、そのリスクは軽減できるでしょう。
例えば、下記のような記事です。ぜひ読んでみてください。
「Lステップ導入しない場合の機会損失ってなに?」あまり知られていないLステップ活用事例を聞いてみた!
【マーケ事例】「交流会イベントを主催して、売上につながるの?」人気イベント主催者が語る裏側と戦略
目的ありきの情報アプローチによる機会損失
翻って、別の論点を加えます。
実は落とし穴として、「やることを検討してからはじめて情報収集する」では時間的なリソース・アクセスできる学習資源が限定的であることなどで意思決定材料になり得る有益な情報にアクセスすることが難しいことがあります。
ですから、日々目的がなくとも学習しておく、ヒアリングしておくという姿勢は忘れてはいけません。「学習のための学習」の姿勢が軽んじられることがありますが、この点で非常に有益です。
蛇足ですが、事前に網羅しているトピックをヒアリングに加えて、マーケティングの全体像をまとめ終えましたら、マーケティングに関する書籍を出版する予定です。
来年の3月で29歳を迎えます、30歳になるまでに20代で学んだ集大成の位置づけで出版するために目下執筆中です。
出版社のつながりもないため、個人の名前で簡単に出版できるKindleダイレクト出版で電子書籍で出版しようと考えていますが、もし出版社の知り合いの方がいたら紹介してください。
まさに、「書籍出版をやったことがないのでわからない」状態で、別に本単体で大きな利益を出す必要もなく、コストもかからないですが、「経験としての価値」を最大化するためにどうせならプロとやってみたいです。
ただ情けないことに、特に私自身に知名度があるわけでもないので大きな売り上げにはならないため、出版社側のインセンティブがないはずで、既定路線でKindleダイレクト出版になるでしょう。
しかし、再現性のないマーケティング施策の成功例や、実務につながらない教科書的なマーケティング本や、ネットで検索したらわかる知識をまとめた書籍よりは、骨太な内容にできるように精神誠意こめて書いています。
マーケティングの実務を理解したい過去の私が有益だと判断できるような内容にするつもりです。
このコラムを読んでいる方も出版したときにはぜひご覧いただければと思います。
以上です!